
エントリーシート(以下、ES)は、大手を中心に多くの企業が選考の最初のステップとしています。その内容は様々で、企業によっては10個以上の質問を、就活生に課してくることもあります。ですが、どんなESでもほぼ必ず訊かれるのは、「志望動機」「学生時代の経験(ガクチカ)」「自己PR」この3つです。特に多くのESに対応しなければならない大手企業は、設問数が多いと読み切れないので、この3つ(のうち1〜2つ)だけを出題する傾向にあります。よって、今回はまず、必ず押さえておきたいこの3つの頻出質問のうち「志望動機」について考えていきたいと思います。
志望動機で書くべき内容
まず「どう書くか」の前に、「なにを書くべきなのか」について整理します。ポイントは「なぜその業界を」「なぜうちの会社を」「なぜその職種を」志望するのか明確に書かれていることです。
業界の志望理由
これは各業界のビジネスモデルの違いをベースに書きましょう。つまり「この業界がどのような形で社会に貢献して、利益を上げているのか?」です。なぜかと言えば、「自分がやりたいことは、この業界にしかない」と明確に示すためです。
たとえば、ここに総合電機メーカーを志望する就活生Aさんがいるとします。彼は「人々の思いを形にして生活を豊かにできるような仕事がしたい」と考えています。
さて、この志望理由は、果たして通過するでしょうか。学歴や学生時代の経験が一定あり、Webテストの成績も良ければ、おそらく大丈夫かと思われます。ですが、そうでなければ、おそらく通過は難しいでしょう。それは、この志望理由が「総合電機メーカー」に限って通用するものではないからです。
Aさんの志望動機では、大抵の業界が志望先となってしまいます。このように「それなら●●業界でも▲▲業界でも良いんじゃない?」と言える志望動機は、採用担当者には刺さりません。つまり「その業界ならでは」の側面に即した志望理由でなければいけません。
では、各業界で明確に異なる側面とはなんでしょうか? それが「ビジネスモデル」です。そのため、ビジネスモデルに即して考えれば、絶対にぶれることのない志望理由が思い描けます。
企業の志望理由
これは企業理念や社風、事業上の強みや弱み、事業戦略、将来の方向性などをベースに書きましょう。なぜかと言えば、同じ業界内の企業同士の違いが、そこに現れるからです。特に、将来に向けたビジョンと実現に向けた事業戦略の2点に注目しましょう。会社が求める人材は、この2点に貢献してくれる人材です。だからこそ、志望理由もそれに即したものにする必要があります。
ここで注意して頂きたいのは、よく志望理由で聴かれるワード「共感」です。できれば、このワードは使わないことをオススメします。
理由は、それは応募者が持っていて当然の感覚だからです。理念や会社の姿勢に共感しない人は、そもそも応募しません。つまり共感はアピールポイントにはならないのです。文字数が限られているESでは、このような「当たり前のこと」は極力書かないようにしましょう。
「当たり前のこと」という点では、会社の製品やサービスそのものへの愛着を中心に論じるのもオススメできません。会社は「ファン」を求めてはいません。会社の発展に貢献してくれる人材を求めています(ファンとしての知識が、会社への貢献に役立つのであれば、もちろん問題ありません)
職種の志望理由
これは自分の能力が活かせるか否かをベースに書きましょう。その職種を通して自分はどういう活躍ができるのか、その活躍を通して会社にどう貢献できるのか、それを明確に示すためです。
業界の志望理由は「自分のやりたいことができる」ことをアピールしており、企業の志望理由は「自分の価値観や性格が企業に合っている」ことをアピールしています。ここまでで、自分が応募先企業に貢献できる就活生であることは伝わります。
- 自分がやりたいことができて、
- 企業理念や社員の価値観も理解・共感していて、
- 事業戦略や将来の方向性なども同じ志を持っている、
これだけ揃えば、志望理由としては大体問題ありませんが、もし可能であれば、実際にどう能力を発揮して会社に貢献できるのか、具体的にアピールしましょう。それが「職種の志望理由」です。総合職採用であれば、希望職種をベースに書きましょう。自分の能力を希望職種を通してどう活かせるのか、それによって会社にどう貢献できるのか、重要なのはこの2点です。
志望動機の書き方
まず基本的な文章の構成は、次のような感じです。文字数は最もオーソドックスな400文字とします。
- キャッチフレーズ(結論):25〜50文字前後
- 業界の志望理由:150文字前後
- 企業の志望理由:150文字前後
キャッチフレーズ
まず一言で「なぜ入りたいのか?」、志望理由を端的に伝えます。注意点としては、「企業理念に共感したからです」のように抽象的な表現ではなく、できるだけ具体的な言葉で伝えましょう。
業界の志望理由
目安として150文字ですので、志望理由のコアとなる部分だけを書くようにしましょう。具体的には自分なりに分析して掴んだ「業界特有の魅力」に惹かれていることを書きましょう。
企業の志望理由
こちらも「業界の志望理由」と基本的な考え方は同じです。コアとなる情報だけを書くようにします。具体的には「企業の事業の特徴(強み・弱み)」「事業戦略」の特徴を端的に伝えつつ、それに惹かれていることを書きましょう。
これで大体、350文字前後です。あとは、自分なりに膨らませたいところや、最後のまとめなどに余った文字数を割いて、文章の体裁を整えましょう。この流れを押さえておけば、志望理由は基本的に問題ありません。
「職種の志望理由」は、400文字で組みこむのは少し厳しいので、入れなくても構いません。むしろ、すべて書こうとして、それぞれの志望理由が中途半端になってしまう方が危険です。ESは一次選考ですので、よほど競争率が激しい企業でなければ、「企業の志望理由」まで書かれていれば、基本問題ありません。ですが、可能であれば、その事業の発展に自分なりにどういう貢献ができるのか、少しだけでも絡めておきたいところです。なぜなら、企業がなにより教えて欲しいのはそこ(=あなたが企業にどう貢献できるのか)だからです。
文字数別の志望動機の書き方
しかし、ESはいつでも400文字というわけではありません。企業によっては100〜200文字、さらには「一言で」(目安25〜50文字)というケースもあります。そこで、ここからは文字数別に、どういった構成にすれば良いのかを見ていきます。基本的には、「2. 志望動機の書き方」で提示した 01. 〜 03. の文字数を目安に、提示された文字数に応じて構成を変えていくイメージです。
50文字以下
端的に「キャッチフレーズ」だけを伝えましょう。
〜100文字
シンプルに「企業の志望理由」だけ伝えましょう。
〜200文字
「業界の志望理由」と「企業の志望理由」の双方を100文字程度に短縮して、両方入れましょう。それが厳しい場合には、「キャッチフレーズ」と「企業の志望理由」を組み合わせるのが良いでしょう。
〜300文字
基本的には400文字と同じです。もし可能であれば、「業界の志望理由」と「企業の志望理由」を少し縮めて、先頭に「キャッチフレーズ」を入れましょう。もし厳しければ、素直に「業界の志望理由」と「企業の志望理由」を合わせましょう。
〜400文字
上記の通りです。
〜800文字
基本的には400文字の構成と同じです。「業界の志望理由」と「企業の志望理由」を膨らませて、最後に「職種の志望動機」を目安150文字前後を加えましょう。
1000文字以上
800文字の構成で、「職種の志望動機」を膨らましょう。

以上が大まかな目安になります。もちろんこの構成は絶対ではありません。ご自身が「この方が自分の志望理由が伝えやすい」というスタイルがあれば、ぜひそちらで書きましょう。重要なのは「業界」「企業」「職種」の3つの志望理由が漏れなく準備できていること、そしてそれを端的に伝えることです。