
この記事は外資戦略コンサルで働く方に寄稿していただきました。日常の仕事やコンサル業界への転職の参考になれば幸いです。
コンサルティングという業界ではプロジェクトごとにチームが組まれますが、このチーム自体が小さな会社組織のような機能分担をしています。このため、テニュア(役職)によって主に担当する業務内容というものが異なっており、必然的に求められるスキルセットというものも変わってきます。
どういった違いがあるのかというのをイメージいただくには、会社組織で考えていただくとわかりやすいと思います。役職が大量にある会社もありますが、基本的な構造としてはトップに社長がいて、そして中間管理職と呼ばれるラインマネージャーと、その下に平社員と言われる末端業務を受け持つ社員がいるはずです。コンサルティングでも同じで、トップにチームの方針を決定するポジションがあり、そしてチーム方針をモジュールやタスクに落とした時にそれを実際に動かしてゆくメンバーと、トップとメンバーを繋ぐ中間ポジションが存在します。
皆さんがファームに入社すると、まずメンバーとして業務にあたります。呼び方はファームによって異なりますが、アナリスト、コンサルタント、アソシエイト、などは全てこのメンバーに当たります。メンバーに必要なスキルは、コンサルタントとしてアウトプットを出すのに必要な基本的スキルであり、例えば分析力、論理的思考力、問題解決力、プレゼンテーション力、タイムマネジメント力など、「コンサルタント」と言われてイメージするものは大半がここに含まれます。細かく分類すればメンバーの中にも入社したてのジュニアなメンバーと、ジュニアメンバーの指導をしつつ自分の業務もこなすシニアなメンバーがいますが、能力的にはあまり違いはありません。敢えて言えば自分のタスク以外の事も見ながらプロジェクト全体を考えられるようになれば、シニアなメンバーとして活躍できるでしょう。
次に、メンバーとして十分な経験を積むと、中間管理を担うマネージャーに昇進します。プロジェクトリーダーやケースリーダー、マネージャーなどと呼ばれるこのポジションでは、主にプロジェクト期間中のチーム内の統率と、クライアントとの折衝を中心に受け持つこととなります。メンバーがクライアント折衝を全くしないという訳ではありませんが、たとえば重要な方針決定等はメンバーが勝手に決めて全体に悪影響が出てはいけませんので、その責任を負うのがマネージャーということになります。常日ごろからメンバーの稼働状況やアウトプットの質、そしてクライアントの反応を見ながら、トップが決めるチーム方針を期間内に最大限実現するように動きます。このポジションではチーム方針をタスクレベルにまで落とし込み、メンバーの能力を勘案しつつ全体最適が実現できるチームを組成する、また実際にチームを動かす能力が必要となります。また、当然ながらクライアントとチームの意図を忠実に汲み取り、それらを一つにまとめ上げることも求められます。曲者ぞろいのクライアントとコンサルタントをまとめなければならないので、最もタフなポジションだと言う方もいます。
そして能力が認められると、オフィサーやパートナーと呼ばれる最も高いポジションに就くこととなります。これらのポジションはファームの顔とも言える重要な地位です。コンサルティングサービスを活用する企業の多くは、「このコンサルティングファームだからお願いしよう」と思うわけではなく、「この人が見てくれるなら依頼しよう」と、チームトップが誰かで判断します。このため、チームのトップは当然ながらクライアントと最も密に関係を持ち、クライアントが抱える問題を全て聞き出し、そしてファームとして提供できる最高の方向性を決定し、かつプロジェクトのアウトプットとクライアントのその後の業績まで、一手に責任を負うことになります。ですから、ジェネラリストのトップというのは珍しく、大抵の場合は得意とする分野を最大限に高めてゆくことになります。また、ファームの全ての売り上げはこのポジションが担っていると言っても過言ではありませんので、その分収入も高ければ責任も重く、常に受け持つプロジェクトだけではなく次のセールスの事も頭に入れながら日々の業務にあたります。