
この記事は外資戦略コンサルで働く方に寄稿していただきました。日常の仕事やコンサル業界への転職の参考になれば幸いです。
最初に申し上げておきますが、キャリアというものはファームが提供するものではありません。自分のキャリアは自分で決めるべきものです。ですから、キャリアについてどのように考えるかというのも、当然人によって異なります。そのうえで、キャリアに関して良く見られるパターンをご紹介しておきます。
まず基本的な認識として、多くのコンサルタントはコンサルタントのことは一生続けられる職業だと思っていたとしても、コンサルティングファームで一生勤められるとは思っていません。もちろん制度上は一生いることも可能ですが、そのうち肉体的な限界が来ます。よほど優秀なコンサルタントであれば体力が衰えても、アドバイザーのような立場で継続することが可能、またそういう依頼をファームが提示するかもしれませんが、確率から言ってそこまで優秀な人はおそらく100人に1人いるかいないかです。ご自身が100人に1人の逸材だと思っておられるような方であれば一生ファーム勤めというキャリアを考えるかもしれませんが、そこまで優秀な方であればあるほど自分はこれがしたいというような信念をお持ちで、逆に永年勤務は考えないように思います。
次に、自分の将来についての考えは、大きく3つのグループに分けられます。
- 独立したい
- 事業会社に行きたい
- 考えていない
ルール上競業忌避義務があるはずですが、中には同じコンサルティング業界の中で転職する人もいます。ただ、そのような方々が最初から他のファームに移りたいと思ってキャリア設計しているという事はおそらくありません。たまたま縁あって自分のやりたい事ができそうだからと移られるのだと思いますので、ここでの類型からは除外します。
コンサルティングファームというところは、他の業界に比べて独立願望のある方の割合が高い職場です。この傾向はおそらく外資系でより顕著ですが、日系でも他業界よりは高いでしょう。理由はいくつかあると思われますが、最も大きいのが他業界に比べて中途採用の比率が高いことと、終身雇用という制度が無いことです。日系は企業にもよるかもしれませんが、少なくとも外資であれば会社としても必ずしも一生勤めて欲しいと思っているわけではないので、「将来は独立したいです」と堂々と採用面接で言えますし、また社内で言っても別に誰も気にしません。会社にとっては少しでも優秀な人がプロジェクトに貢献してくれて、独立志望の人にとっては経営を目の当たりにした業務に従事できますので、お互い良い関係が成り立っていると言えます。
将来は事業会社に行きたいと思っているコンサルタントもいます。これは、最初から事業会社に行くことを念頭に置いて入社するというよりは、コンサルティングという業務を通じて経営というものの面白さを知り、実際に自分でもやってみたいと思うようになるという流れが多いように思います。考え方としては独立と似ているところもありますが、一般の事業会社から事業会社へと転職するよりは、経営知識を持った人材として比較的高めのポジションで入ることが可能ですので、このようなキャリアを選択しようとお考えの方も多くおられます。また、自分のやりたい事業内容が既に世の中にある場合、新規で立ち上げることの難しさはコンサルタントをしていれば嫌でもわかりますので、(もっと遠い将来に独立するかはあるにせよ)まずは既存の事業会社でとプランニングするのが妥当な流れです。
そして、考えていないという方も結構な数でおられます。例えば新卒で入社する時に、人生設計がそこまで明確な人はどの業界を見ても稀でしょう。コンサルティングも同じで、今はコンサルティングという業務が面白そうだ、でも一生続けるわけでもない、次にどこに行くかを見るために色々な業界を見たい、ということでコンサルティングファームを選択するのも立派な理由のひとつです。敢えて言えばそういう方ほど次が見えないという理由で"Up or Out"を気にすることになりがちですが、結論だけ言えばどのような道に進むにせよ経営というものは役に立ちますのでまずは目前の業務に打ち込むのがよいでしょう。