
今回は外資金融のES対策についてお伝えできればと思います。外資金融はサマーインターンやウィンタージョブでの評価が内定に直結してきます。今回は、外資金融への就活の事前準備として活用いただければ幸いです。
ESのテーマについて
まず、どんなお題が出題されるのか確認しておきましょう。 外資金融のESは、そこまで捻ったお題は出題されません。比較的オーソドックスなものが多いです。基本的には、
- 学生時代の経験
- 自己PR(セールスポイント)
- 応募部門への志望動機
この3つになります。それ以外の質問では、過去に以下のようなものがありました。
- 友達のなかでの自分の役割(バンクオブアメリカ・メリルリンチ)
- 卒業論文・研究のテーマについて(ゴールドマン・サックス)
- 自己PR以外で、あなたをより深く知ることのできるエピソード(モルガン・スタンレー)
ですが、独創性を求められるような特殊なテーマはありません。文字数も300〜600文字程度と多くも少なくもなく、比較的書きやすいと思います(稀に100文字などありますが、例外です)
ESで差がつくポイントは?

このように、狭き門のイメージの強い外資金融と言っても、そのテーマ内容も文字数も一般的なものです。しかし、言い換えれば、それは「常日頃の大学生活の差が如実に現れるES」であるとも言えます。また、誰もが書きやすいテーマのため、「文章構成力」「表現力」など、細かい部分でも差がついてきます。 ここでは、上記の3つの質問について、それぞれ注意すべきポイントを見ていきたいと思います。
学生時代の経験
注意すべきは、次の点です。
伝えているアピール内容が、企業そして応募部門の求めるものと合っているか?
アピールで重要なのは、「貢献できること」と「会社のカルチャーに合っていること」の2点です。ここで、特に外資金融で気をつけておきたいのが、前者の重要性が他の業界よりも高いことです。
たとえば大手日系企業であれば、その2つの方向性が企業の求めるものと合っていれば、それで十分「内定」に届きます。日系大手企業は数百名の大量採用を行います。その大半が配属未定の総合職採用です。そのため、行動力や問題解決力といった汎用的な能力が一定水準あれば、内定に値します。
もちろん、希望職種は聴かれるでしょうが、そこで重視されるのは「その仕事に貢献できる能力があるか」以上に「その仕事のことを理解しているか」です。能力は入社後の教育・研修で磨くのが大手日系企業の考え方です。
しかし、外資金融は少数採用です。そのため、単に「能力がある」ことをアピールする程度のESでは、必然的に落ちると思っておいた方が無難です。求められる能力というベクトルの「方向性」だけではなく、その「太さ」まで要求されると考えておいた方が無難です。
だからこそ、自分が志望する部門が、どういった仕事をするところで、そこではどんな働き方が求められているのか、キチンと押さえておきましょう。そうして、まず企業側の「こんな貢献をして欲しい!」をしっかり把握します。そして、「私にはこんな強みがあります」「その強みでこれだけの実績を上げてきました」「その強みは御社にこんな形で活かせます」の3点を、それぞれ盛りこんでアピールとしましょう。
また、もし可能であれば、ぜひ「ビジネス」「経済」に絡めたアピールができると良いです。
筆者は投資銀行部門の自己PRでは、ビジネスコンテストで優勝した話を使っていました。新規事業を成功させるためには何が必要なのか、それを考え、行動してきた経験をアピールしました。もちろんこれは、投資銀行部門が、顧客の経営資源の効率的運用や合併・買収のアドバイザーのような存在としてあることを意識しています。 補足としては、特に世の中の様々な情報にアンテナを張り、自分なりの分析を行っている姿勢をアピールできればベストです。
自己PR(セールスポイント)

自己PRも、基本的には「学生時代の経験」と同じスタンスです。
ここでは特に、あなたがどんなスキルを持っているのか、それをどう応募先部門の中で活かしていけるのか、その視点が重要視されます。
その際、できれば「頭」と「体」と「心」の3つの面で、職務に堪え得るポテンシャルがあることをアピールしましょう。
外資金融は体力勝負の世界でもあります。激務で有名ですが、週に数時間しか眠れないという状況も普通にあり得ます。入社当初はひたすら上から言われた調査・分析・資料作成をマシンのようにこなす日々ですから、体力がなければ生き残れません。
また、精神的なストレスもかなりあります。仕事の規模も大きく、また大量の仕事に追われるプレッシャーもあります。さらにダイレクトに財務に絡む仕事のため、アウトプットの品質・正確性もほかの業界・企業以上に求められます。 ポイントとしては、「何事にも泥臭く取り組めること」そして「地頭があること」です。地頭の力と心身のタフネスです。単に体力的・精神的な強さがあるだけではなく、また単に頭の回転が速いだけでもない、その両者を備えている学生であることを積極的にアピールするようにしましょう。文量的には、後者(頭)を多めに割くと無難です。体力・精神力は極論、あることが伝われば良いです。より重要なのは仕事で必要となる地頭の力です。
応募部門への志望動機
志望動機は「なぜ金融業界で」「なぜ御社で」「なぜその部門なのか」の3段階で、きちんと志望理由を伝えましょう。
過去のエントリーシートでも、「金融業界およびJPモルガンを志望される理由をご記入ください」のように、敢えて業界と企業名を分けて出題した企業もありました。そこまで詰めなくてもES程度は通過はできますが、その後の面接でどちらにしろ訊かれますので、この段階できっちりと詰めておきましょう。
ですが、ESでの志望動機欄は大抵、400文字程度です。この3段階で、それぞれ志望理由をまとめていては、かなり字数ギリギリになってしまうでしょう。そのため大切なのは、コアとなる一言を用意しておくことです。つまり、その一言があれば「ああ、この子は業界のことが分かってるな」と思わせることのできる一言です。
そのために必要なのは、各部門間の違いを知ることです。
「応募部門にどんな興味があるのか」だけでは不十分です。落ちる就活生のESの大半は「それならこの部門でなくても良いんじゃない?」と思えるものばかりです。必ずすべての部門の特徴について調べてから、「そのなかで、なぜ応募部門なのか?」をまとめていきましょう。
あまりにも当たり前のことですが、
「投資銀行部門」と「マーケット部門」の違い。
「マーケット部門」の中における、セールス、リサーチャー、ディーラー、トレーダーの違い。
などなど、この辺りくらいは「自分の言葉で」「分かりやすく」説明できるくらいまで落としこんでおきましょう。
たとえば、そもそも投資銀行部門とマーケット部門では、業務の目指す目的が正反対のため、混同しようがないと思うかもしれません。ですが、意外と抽象的な志望理由しか書けない就活生も多く見受けられます。
また、もう1点、可能であれば「自分なりに考えた応募部門の価値」を付記することができればベストです。たとえば、以下に筆者の例を示してみます。
筆者は主に、投資銀行部門が志望でした。たとえば、ファイナンスが不健全な企業は、いくら素晴らしい事業に取り組んでいても、その価値を社会に最大限提供できません。そして、結果として起こるのは日本の場合、大抵が非合理的な経費削減やリストラによる表面的解決です。つまり、根本的な財務管理がまだまだ不足しています。そうした土壌を変えることには、非常に大きな社会的意義があると考えていました。
・・・このような感じのアピールを、志望理由に端的にまとめて入れこんでいました。なかなか突っこみどころが満載ですが、あまり的から外さず、自分なりの言葉で説明できていれば十分です。
ES全体で1本の軸を通す
最後に1点、ポイントとしては「ES全体に1本の軸が通っているか?」を見直しましょう。大量採用の日系企業であれば、そこまで固めずとも内定が得られるケースは多いです。しかし、外資金融は採用人数自体が狭き門の上に、応募する就活生はいわゆるエリートばかりです。ESの説得力は可能な限り高めておきましょう。
筆者の場合、基本的にはビジネスコンテストでの経験が軸となっています。そこで事業の成否について考えた経験と優勝した実績が強みに、そして実際の事業立案を通してファイナンスの重要性を認識したことが志望理由に、それぞれ絡んでいます。
1本の軸が通っているのといないのとでは、ESの説得力が格段に変わってきます。色々なことをアピールするよりも、なにか一つのアピールを軸にしてESを作成することをオススメします。

以上、外資金融のES対策の基本になりました。テーマ自体は一般的で書きやすいですが、だからこそ一層説得力のある回答が求められていることを重々押さえておきましょう。