
この記事は海外で勤務されている方に大学生時代を振り返ってもらい寄稿していただきました。海外で働きたい就活生や転職者の方の参考になれば幸いです。
海外で働くという事
「もっと刺激のある生活がしたい!」「グローバルな人間になりたい!」「インターナショナルビジネスを学びたい!」「海外で大成功したい!」など、いろいろな理由で、海外で就職したいという大学生の人は多いと思います。
でも、どうやったら海外で働けるのでしょうか?世界中でグローバル化が進んでると言っても、日本は他国に比べると、外国人留学生や外国人労働者の数がまだまだ少ないようです。そういった点で、ほとんどの人が、海外で働くということにピンとこないかもしれません。自分が海外で働くとしたらどうなるでしょう。どうやって仕事を探したらいいのでしょうか。
海外と言っても、たくさんの国があります。どの国で働くのが自分にとって一番良いか、海外でちゃんと自立して生活していけるのか、語学力はどれくらい必要か、自分はどんな仕事を本当にしたいのか、将来のキャリアプランはどうするかなど、たくさんの疑問がでてくると思います。また、住む国の文化に馴染めるか、10年後20年後に日本に戻るか、海外に永住するかというのも、しっかりと考えなければなりません。
アメリカは最も就職しやすい国?
アメリカは他国に比べて、日本人や外国人にとって、最も就職しやすい国ではないでしょうか。アメリカ経済は、外国人なしでは成り立たないとよく言われます。アメリカは移民の国であり、アメリカ人の多くは、移民に対してとても寛容です。アメリカで外国人として働くのは、決して簡単ではありませんが、そこまで難しくもありません。
アメリカでは、たくさんの移民が、全く英語を話せない段階から英語を学び、一生懸命働いて豊かな生活をしています。2012年には、100万人以上の移民が、アメリカの永住権を取得しました。アメリカは、それだけ外国人にとって魅力があり、外国人でも生活していける場所なのです。
アメリカはまだ、アメリカンドリームが存在する、” Land of opportunity”、ゼロから始めても成功できる国なのかもしれません。アメリカ文化の根底ににある平等の精神も移民にとって有利になります。働くうえで、性別、人種、年齢はあまり関係ありません。実力さえあれば何とかなるというのがアメリカ的と言えるでしょう。
アメリカ人の人々が、一生のうちに転職する回数が、平均8回と言われています。一般的に、転職するたびに、最低10パーセントから15パーセント、人によっては100パーセント以上、年収が上がります。アメリカでの転職は、ひとつの会社にとどまらず、転職をしながら、キャリアアップしていくのが普通です。自分の実力を生かして、いろいろな場所で働きたいという人に、アメリカで就職するのが向いていると言えるでしょう。
また、日本の経済停滞のせいもあり、日本とアメリカで似たような仕事をしている人の給与を比べると、アメリカでの給与のほうが、1.5倍から2倍高いというケースがたくさんあります。日本で働くより、アメリカで働いたほうが、裕福になるチャンスがあるかもしれません。
アメリカで合法的に働く権利を取得する
アメリカで就職をするためのファーストステップは、アメリカで合法的に働く権利を取得することです。アメリカで働くためのビザを取得する方法はいくつかあります。
ひとつめは、J1(研修、エクスチェンジ)ビザの取得です。一般的にインター ンシッププログラムとして知られるビザで、最長18カ月まで、アメリカでお金をもらいながら働くことができます。このビザは、日本から申請できます。
ふたつめは、アメリカの大学などを卒業する時に申請できる12カ月から23カ月間有効の、オプショナルプラクティカルトレーニングビザを取得することです。オプショナルプラクティカルトレーニングビザの主な目的は、留学生が自分の専攻分野の仕事に就くことです。
このオプショナルプラクティカルトレーニングビザがある間、ワーキングビザのスポンサーになってくれる会社を探すのが、アメリカで就職する一般的な方法です。
J1ビザの取得
J1ビザは、インターンシップ用のビザで、最長18ヶ月まで有給で仕事ができます。他の労働ビザに比べて手続きの費用の負担が少ないので、人気のある雇用のスタイルになりつつあります。J1ビザは,日本の短大(専門学校を含む)以上の学歴で申請可能です。
このビザの問題点は、J1ビザが切れた時、2年間アメリカ国外にでなければならないかもしれないことです。でも、アメリカの大学の資格を必要としないので、日本の大学を卒業してすぐにアメリカで働くことができます。そして、将来アメリカ企業での就職につながるかもしれない、とても大切な働く経験を得ることができます。
就職を成功させるための留学
アメリカの大学に留学すると、所属している学校から20時間までの働く許可、インターンシップのクラス、オプショナルプラクティカルトレーニングビザなどアメリカで働く権利を得るることができます。例外もありますが、ほとんどのアメリカの企業にとって、日本の大学教育だけというのは、言葉や文化も違い、評価をするのが難しいのが現実です。
それに加え、アメリカで働いた経験がないとなると、即戦力になりそうもないように見えてしまうので、雇うのに躊躇してしまいます。でも、日本の大学生でも、交換留学をしたり、途中でアメリカの大学に編入したり、日本の大学を卒業してからアメリカの大学院に入るなどして、少しでもアメリカの教育に触れ、英語力があるのを証明し、アメリカで働いた経験と自分の得意分野をアピールできれば、アメリカの企業に就職することが出来ます。
英語の実力
アメリカで就職するには、どれくらい語学力が必要でしょうか。完璧な英語力が必要でしょうか。思春期までに英語を習得しない限り、大人になってから留学しても、ネイティブスピーカーのようにはなかなかなれません。でも、アメリカで就職するからと言って、完璧に英語を話さなければいけないというわけでもありません。
アメリカにある日系企業に就職するのであれば、職種にもよりますが、日本語や日本文化の理解が重視されるので、語学力はそこまで問われません。実際、英語をあまり話せなくても、アメリカにある日系企業で働いている人達がたくさんいます。もちろん、バイリンガルという事で現地採用されるわけですから、最低条件で、アメリカの4年制大学を卒業できるぐらいの英語の読み書きのコミュニケーション能力が必要です。
アメリカの企業で働くには、英語で仕事を遂行するのに支障をきたさない程度の英語力が必要です。仕事によって、ネイティブスピーカー並みでなければならないこともありますが、インフォメーションテクノロジー、エンジニアリング、医学の分野は、高度な専門知識を問われますが、外国人の雇用が多く、英語に訛りがあっても働きやすい環境です。アートやファッションも、自分の作品が良ければ、仕事に必要な英語が使えれば大丈夫です。
就職活動の前に仕事をする
アメリカの企業では、即戦力が問われます。働いた経験がないと就職するのが、とても難しくなります。アメリカでは、大学生は大人とみなされ、ほとんどの学生が実家を出て、生活費や学費を自分自身でまかないます。そのため、アメリカ人の学生は、就職活動をするまでには、ある程度働いた経験があるのです。
アメリカでは、一般的に、大学生で自立していないと、幼稚で安心して仕事も任せられない印象になっています。学校から、20時間の働く許可を得てアルバイトをしたり、インターンシップをして、少しでも働いた経験を身に着けるようにしましょう。
日本でアルバイトをした経験があるのなら、その経験の内容を履歴書に書くようにしてください。今まで働いた場所の上司から推薦状を貰い、面接官にその推薦状をわたすと、印象が良くなります。
アメリカでの仕事の経験
アメリカで就職するのにとても大事なのは、働いた経験があるかどうかということです。アメリカの企業は、即戦力を一番重視するので、全く働いた経験がない人は絶対と言っていいほど雇いません。
働いた経験がない人は、J1などの研修ビザで、経験を積むのが良いでしょう。現地採用を行っている日系企業も、日本人のバイリンガル能力と、アメリカでビジネスをしていけるかどうかを採用基準にしているので、アメリカでの働いた経験は就職にかなり有利になります。
日本人の留学生も学生時代に、インターンシップやアルバイトをして、アメリカで働く経験を得なければいけません。そして、インターンシップ先やアルバイト先で、仕事を紹介して貰ったり、大事な人脈がつくれたり、働いている場所で気に入られて就職できるようになったりなどの、就職につながるような大きなチャンスを得られることができると思います。
アルバイトの探し方
学校で働く許可をもらった後、英語の履歴書を作成し、学校で紹介している求人に応募します。英語の履歴書を書くのは、学校でのワークショップやキャリアサービスのオフィスで手伝ってもらえます。面接を受ける時のコツなども教えてもらえます。
アメリカ人の友達に履歴書を見てもらい添削してもらうのも、ひとつの方法です。ニューヨークやロサンゼルスの大都市には、日系の会社がたくさんあるので、英語にまだ自信がない場合は、日系企業でアルバイトをすることもできます。
日系企業と言っても、アメリカにあるので50%アメリカ式、50%日本式の働く環境の所が多いようです。アメリカのビジネスと日本のビジネスの両方を同時に学べるので、あまり働いた経験がない人にとっては特に勉強になるのではないでしょうか。日系企業でのアルバイトは、現地にある日系コミュニティ用の新聞に載っている求人広告から探すことができます。
インターンシップ
インターンシップは、学校で紹介してもらえる場合もありますが、自分で探さなければいけない場合もあります。就職を有利にするには、有名な会社でインターンシップをし、良い仕事をして、そのインターンシップ先で、就職のための推薦状をもらうと良いと言われています。
インターンシップ先で、たまたま自分のスキルにあう仕事があれば、就職に結びつくこともあります。自分の学校でインターンシップのクラスが取れない時は、自分で見習いをしたいという手紙を働きたい会社に送り、運が良ければ、気に入った会社で働かせてもらえる時もあります。このように会社にアプローチする時は、報酬がないこともあります。
しかし、あまり働いた経験がない人には、報酬がなくても、インターンシップ先で働いた経験を履歴書に書けるので、就職に有利になるという利点があります。アルバイトでもインターンシップでも、働いた経験が多ければ多いほど、即戦力があるとみなされて、就職しやすくなります。
雇主が重視するのは、働いた経験と成績の良さなので、アルバイトやインターンシップで働いている時も、学校の成績が常に良いように勉強を頑張るのも忘れないでください。
プラクティカルトレーニング
学校を卒業し、プラクティカルトレーニングビザを取得した場合、どこの会社でも働くことができます。日系企業でワーキングビザを申請してもらいたい人は、日系の人材派遣会社に登録をし、就職活動をします。日系企業で採用されやすい人は、日本でも最低3年ぐらい働いた経験がある人です。
雇う側も日本のビジネスのノウハウを知っている人を好みます。日系企業では、日本の大学を卒業し、日本で3年ほど働き、その後アメリカでMBAを取得した人などが最も好まれるのではないでしょうか。ワーキングビザを申請する時も、MBAやPhD(博士号)を持った人のほうが、ビザを取得しやすいと言われています。
アメリカの企業の日本支社からアメリカに異動
はじめに、日本でアメリカに本社があるアメリカ企業の日本支社に入社します。その企業で実績を挙げた後、アメリカの本社で働きたいという希望を申し出ます。自分の仕事の内容を理解したうえで、海外就労を実現でき、待遇や条件などが近いポジションで、アメリカに異動するのことができます。
また、会社でちゃんと良い実績を残せば、日本支社側から、アメリカの本社で働くための推薦をしてもらうことができ、仕事振りやスキルのわからない外国人である日本人を雇うよりは、企業にとってもリスクが低く安心して雇ってもらいやすいでしょう。
ただし注意点は、アメリカ人で似たようなスキルがある人を雇わないで、ワーキングビザなどの手間のかかることをしてまで、本社で雇いたいという ようにアメリカ本社側に思ってもらわけなければなりません。
日本企業の駐在員としてアメリカで働く
大学卒業後、海外に支社や支店のある日本の企業に就職し、海外駐在員としてアメリカで働く方法があります。海 外での事業展開や社内留学制度に力を入れている会社であるかどうかをしっかり確認するようにしてください。駐在員は、一般的にキャリアが安定していて、ビザもおりやすく、海外に住むため報酬が上がったりすることがあります。
社内留学制度や研修制度では、アメリカなどの自分の行きたい国を決めたり、希望したりできますが、 管理職で海外に駐在員として赴任するのはとても運が良くなければ、自分の希望する国で働くことは少ないようです。実際駐在員になる時は、開いているポジションに、一番適した人を移動するのが会社にとって一番良いわけですから、たいていは、本人が海外に興味があるか興味がないか関係なく、スキルレベルがそのポジションにあっているという理由で、駐在員として海外に送られます。
もちろんアメリカで働きたいという希望は出せますが、それがいつになるかは会社次第なので、ちょうどいいポジションがないということで、アメリカで働くチャンスがないということもよくあります。
アメリカの専門分野の求人に直接申し込む
大学を卒業してから、しばらく日本で働き、特殊技術を身に着けたり、自分の働く分野のエキスパートになってから、アメリカの求人に直接申し込みアメリカで働くことができます。一例ですが、大学で工学や医学の分野において博士号を取得した後、何年か日本の大学で研究者として働きます。
その後、アメリカの大学のサイトで、自分にあった研究職の求人を探し、その募集しているサイトに直接応募します。履歴書、論文、Skypeでの面接だけで、J1ビザのスポンサーになってもらい、アメリカで働くことができる研究者の人もいます。博士号保持者で特殊な知識を持っている人は、J1ビザからワーキングビザへの変更、更に、ワーキングビザから永住権を取得するのも、比較的スムーズにいきます。
アメリカでは、ワーキングビザを支給する数が限られており、ここ数年ビザを申請する人の数も増えているので、年々ワーキングビザを取得するのが難しくなっていますが、博士号があるとビザを取得するのが大変有利と言われています。
アメリカで働く時の注意点
アメリカで就職するには、永住権やアメリカ国籍がない限り、アメリカで合法的に働くために、どこかの会社にビザや永住権のスポンサーになってもらわなければなりません。
会社にスポンサーになってもらっている間、転職などしにくいので、給料が低いのに長時間労働をさせるなどの働く環境があまりよくない状態に陥る人がたくさんいます。転職することもできますが、またスポンサーを探し、ビザの申請を一からやり直さなければならないので、時間のロスになります。
特に、永住権を取得して、長期間アメリカで働きたい人は、永住権を取得するまで、スポンサーになってもらう会社に何年も努めなければなりませんから、就職する会社をしっかりリサーチしてから就職するようにしてください。
アメリカにある日系企業で就職する
アメリカで長期間働くためには、ワーキングビザが必要です。ワーキングビザを一番取得しやすいのが、アメリカで日系企業に働くことだと言われています。アメリカにある日系企業は、だいたいが日本の大企業で、英語の話せる日本人を探しています。
また、会社がワーキングビザを申請する時に、アメリカ人を雇わずに、なぜ外国人である日本人を雇わなければならないのかという理由がなければ、ワーキングビザはなかなか発行されません。その時に、アメリカ人の人ではできない仕事をしてもらう、日本語を話せる人ではなければならないということになるわけです。
アメリカの企業で働く
アメリカの企業で、日本人を探している時がたまにあります。日本人向けにビジネスをしている会社で、日本語が出来て、日本のビジネスのノウハウを知っている人を求めています。就職する時に、その会社で、ワーキングビザのスポンサーになってくれるかどうか確認するようにしてください。
アーテイストやデザイナーの人によくあるケースは、自分で就職したい会社を探し、会社に直接、履歴書と自分のポートフォリオを送るなどし、面接をします。あまり多いケースではありませんが、アメリカの会社で、作品がとても気に入られて、就職し、ワーキングビザのスポンサーになってもらう人もいます。日系企業に就職するのに比べると、アメリカの企業に就職するのは難しいと言われています。
アメリカ企業か日系企業か
ワーキングビザを取得するために、ワーキングビザのスポンサーになってくれる日系企業にとりあえず就職し、日系企業で何年か働いた後、アメリカの企業に転職する人がいます。日系企業でワーキングビザを取得した後、永住権を取得します。永住権があれば、アメリカ人のようにどこにでも就職することが出来ます。
でも、ビジネスを大学で専攻し、日系企業で長く働いた人で、日系企業にとどまる人もたくさんいます。なぜかというと、やはりビジネスの分野でアメリカ企業で働くには、かなり語学力が必要なのと、日本の会社に慣れてしまうと、アメリカの企業で一から新しい仕事のやり方をするのは、あまりにも大変だと思ってしまう人が多いようです。
コンピューターサイエンスを勉強した人は、日系企業が心地よいと思う人もいるでしょうが、IT産業は外国人の人が多く、仕事の内容によりますが、語学力がそこまで問われない仕事が多いのと、一般的にアメリカ企業のほうが働く条件が良いことが多いので、結局アメリカ企業に転職する人が多いです。
オプショナルプラクティカルトレーニングビザからワーキングビザへ
多くの留学生が、大学を卒業した後にオプショナルプラクティカルトレーニングビザを申請します。オプショナルプラクティカルトレーニングビザは、最長23カ月アメリカで働く権利が与えられます。このビザがある間、ワーキングビザのスポンサーになってくれる企業を探します。
一番簡単なのは、日系の人材派遣会社に登録し、ワーキングビザをサポートしてくれる会社を紹介してもらいます。アメリカの企業での就職は、ワーキングビザのサポートをしたことがない会社が多いので、もう少し難しくなります。新聞広告や、人材派遣会社で仕事を探し、就職する時に、その会社からワーキングビザを申請してもらわなければいけません。全て自分で申請の手配をしたり、弁護士費用を払ったりしなければいけないかもしれません。
ビザのための弁護士費用は、日系の会社でも一部しか払ってくれない会社もあるので、会社にビザのスポンサーになってもらう時に、自分がどれくらいビザ申請の費用の負担をしなければならないのか確認しましょう。また、ワーキングビザから永住権を取得することは、比較的容易だと言われています。