
今回は外資コンサルのES対策についてお伝えできればと思います。一言で「外資コンサル」と言っても、経営コンサル、業務・ITコンサル、人事コンサルなど、業態が様々です。今回は、どの領域を目指す方にとっても大切な基本をお伝えいたします。
ESのテーマについて
まず、どのようなお題が出題されるのか、確認しておきましょう。
コンサル業界のESに特有なのは、自己PRなどのオーソドックスな質問以外に、少し特殊なお題も出る点です。特に戦略系ファームで、こうした独特の毛色のお題が課されることが多いです。具体的にいくつか過去の出題例を挙げておきたいと思います(一部、外資ではない企業も含みます)
ex1. ベイン・アンド・カンパニー
- あなたにとってチームワークの定義とは?
- あなたにとってリーダーシップの定義とは?
- 海外における経験について、場所・期間・具体的経験について
ex2. アビームコンサルティング
- 人生で最大のピンチについて
- 就職活動の会社選びで重視していることは?
- 自分にキャッチフレーズをつけるとすれば?
ex3. アクセンチュア
- 当社のホームページを見て、アクセンチュアはどのような会社だと思うか?
ex4. プライスウォーターハウスクーパース
- コンサルタントに必要な資質とは?
- 東京、大阪、名古屋以外に弊社の拠点を出すとすれば?
ex5. ドリームインキュベータ
- 人生で最も困難だったこと、それをどう乗り越えたか
- あなたの価値観形勢に最も影響を与えた物・事について
ex6. ワトソンワイアット
- 好きな日本企業1社の強さとグローバルで成功するための課題・解決案は?
- 20代の意識・行動面の特徴を挙げ、そうした人材の力を最大限引き出すために企業がすべきことは?
ESの文字数について

上記の通り、テーマも企業によって様々です。加えてもう1点、特徴的なのが「文字数」です。
戦略系ファームは大体、1問あたりの文字数が200〜400文字前後と少ないケースが多いです。逆にそれ以外の(総合系・IT系などの)ファームは1問あたりの文字数が800〜1000文字と多いのが特徴です(もちろん企業によって差はありますが)
この文字数からも、ESのなかで「なにを語るべきなのか」が大体見えてくるかと思います。 たとえば自己PRの場合、戦略系ファームでは「アピール内容の結果」を、それ以外のファームでは「アピール内容の過程」を見られていると考えると安全かと思われます。特に人事系(ワトソンワイアットなど)・IT系(PwC、IBCSなど)などは、思考の過程を深いレベルまで見るためか、かなりの文字数を要求する傾向にあります。
オーソドックスな質問に対するポイント
テーマと文字数を見て頂いたところで、ここから具体的に、テーマ別になにを意識すべきなのかを考えていきたいと思います。まずはオーソドックスな質問、以下の3点についてです。
- 学生時代の経験
- セールスポイント(強み)
- 志望動機
学生時代の経験

コンサルタントの募集ですから、当然「一流のコンサルタントになれる素養がある」ことを訴えなければなりません。
一番無難なのは「PDCA」を回した体験です。コンサルタントに限らず、あらゆる仕事で必要な姿勢ではありますが、これなら大体の企業でも通用します。顧客の業務の課題を分析、解決策を立案して実行する、そして効果を検証する、この流れはコンサルタントの業務の基本です。
総合系・IT系コンサルであれば、ネタの中身にもよりますが、これだけでも十分です。しかし、戦略系となりますと少し事情が変わってきます。
戦略系は文字数が少ないため、PからAまで全てを入れこむのが厳しいのが現実です。そのため、すべての要素を書こうとすると、どうしても抽象的な内容になってしまいがちです。ですが、具体的な中身のないESでは、どんなレベルの高い実績があっても通過はできません。そこが難しいところです。では、どう書けば良いのでしょうか?
筆者が現役の就活生のとき、そこに悩み、最終的に「困難」と「乗り越えるために試みたこと」がポイントではないかと考えました。理由は(戦略系)ファームのESのお題として、「人生で一番の困難は? それを乗り越えるためにどうしたか?」というものが多かったことがありました。ですので、ファームではそこが求められているのだろうと思いました。 実際にその視点から戦略系ファームのESを書いてきましたが、BCGを除く大方の戦略系ファーム(マッキンゼー、A・T・カーニーなど)には通過できました。ですので、この視点が重要であるという考えは、そこまで的を外してはいないと思われます。
セールスポイント(強み)
特に総合系・IT系のファームで「強みは?」「それをどう活かせるか?」というのは定番の質問です。ここでも重要なのは、「一流のコンサルタントになれる素養がある」ことを示すことです。
コンサルタントに必要とされる素養については、各社の説明会やセミナーで理解しておくと良いでしょう。
課題を発見し、解決するための分析力や実行力。顧客と折衝するコミュニケーションの能力。激務に耐え得る体力と精神力。また、総合系・IT系はSIerのような業務も行っているので、ITをどう使えば顧客にメリットがあるのか、そうしたプランを考える企画力も必要と言えるかもしれません。また、様々な業界と触れ合っていくため、未知のことでも貪欲に学んでいける知的好奇心が旺盛であることも重要だと言えそうです。
ESの流れとしては、次のような構成が無難でしょう。
- 私には、こんな強みがあります(50文字前後)
- それが強みであることを示す具体的なエピソード(200文字前後)
- それがなぜコンサルタントとして活きてくるのか?(100〜150文字前後)
重要なのは、単に「活かせる強みがあります」だけではなく、なぜそれが「強み」なのか、その理由をキチンと説明することです。
たとえば、単に「行動力があります」と書いてあるESがあるとします。しかし、採用担当者は、どれくらいの行動力なのか分からなければ、そもそも採否の判断のしようがありません。たとえば「毎日100人が閲覧するブログを企画した」のか、「30人いたサークルのメンバーを倍にした」のか、そうした具体的な数値や実績で端的に伝えましょう。
また、その強みが「なぜコンサルタントにとって強いのか?」も、キチンと整理しておきましょう。単に「強み」を尋ねられているだけでも、「強みをどう活かせるのか?」をさらりと盛りこんでおくのがベターです。
この設問は、ファームによっては、800文字くらいを求めてくる場合があります。たとえば、筆者が就活生だったころ、アクセンチュアで「あなたはなぜコンサルタントに向いていると思いますか? どんな貢献ができますか?」というお題で800文字が課せられました。400文字くらいであれば、強みが1つでも十分ですが、800文字ですと、流石にそれでは少し物足りません。最低でも2つくらいは書いておきたいところです。
最後に1点、強みのアピールとして押さえておきたいのが、「あくまでも学生レベルである」という点です。
外資コンサルに応募する学生は、就活戦線の猛者ばかりです。高学歴は言わずもがな、学生時代の実績も相当なものを持っているでしょう。この記事をご覧頂いていて、外資コンサルを志している皆さんも、様々な活動や勉学に積極的に取り組まれていることと思います。
ですが、その「強み」が「すぐにでも仕事で活かせます!」という見せ方は控えましょう。あくまでも「学生レベルの強み」であることを自覚した上で、その「伸びしろ」で訴えるようにしましょう。アピールすべきは「一流のコンサルタントとして活躍できます!」ではなくて、「一流のコンサルタントになれる素養を秘めています」です。謙虚な姿勢は忘れないようにしましょう。
志望動機
志望動機は、「なぜコンサル業界なのか?」「なぜうちの会社なのか?」「うちの会社でなにがしたいか?」の3点が固まっていれば問題ないでしょう。特に難しいのが「なぜうちの会社なのか?」だと思います。
コンサルティングは無形のサービスのため、違いが見えにくいというのがあります。戦略系とIT系の違いであれば、当然展開しているサービスラインナップが異なりますので、その違いは明白です。しかし、たとえばIT系ファーム同士であれば、その差異がどこにあるのか、掴みにくいかもしれません。他社との違いは、ホームページやセミナーなどでしっかりと押さえておきましょう。
たとえばIT系でも、戦略から開発、さらにはアウトソーシングまで総じて強いアクセンチュアに対して、ややシステムエンジニア集団という色の強いアビーム・コンサルティングなど、事業の強みは明確に異なります。社内文化も、かなり異なります。筆者の就活生当時の感覚ですと、和気あいあいとして横の繋がりが強いアビーム、人情味あふれる人の多いプライスウォーターハウスクーパース、クールな人の多いベリングポイント(いまはもうありませんが)、粛々とマシンのように業務をこなすIBCS、理知的でありつつイケイケドンドンなアクセンチュアといった感じでした。
ただ、注意して頂きたいのは、コンサルタントは基本的にプロジェクト単位で働いているという点です。 働き方は客先常駐などが多いため、社員の声は「プロジェクトで働いた感覚」をベースに語られています。そのため、「社風」と言っても、「プロジェクトの雰囲気」が語られることが多く、何人かに話を聴くと真逆の意見が出てくるということも往々にしてあります。そのため、複数名の社員の方の声を参考に、企業としての強みや社内の文化を掴んでいくことをオススメします。
特殊な質問に対するポイント
オーソドックスな質問とは別に、少し毛色の違う質問に対しては、なにを気をつければ良いのでしょうか?
今回は、過去にとあるファームで出題されたお題を1つ、例に説明していきたいと思います。
質問
現在、弊社の拠点は東京・大阪・名古屋の3拠点ですが、今後新たな拠点を作るとしたら、あなたはどこに作りますか (全角300文字以内)
まず最初に気をつけて頂きたいのは、正確な回答は必要ないということです。そもそも企業側も、期待していません。重要なのは、なぜその回答を導いたのかの「論拠」と、その論拠の「妥当性」です。
今回のテーマですと、「なぜその道府県にしたのか?」に明確な論拠が必要です。
ここで気をつけて頂きたいのは、あなたがあくまでも「コンサルタント」として回答しなければなりません。いち学生の思いつきのアイデアや感想を求められているわけではありません。応募先企業のコンサルタントとして会社に貢献するためにはどうすれば良いのか、その視点が重要です。では「貢献」とは? 一言で言えば「利益」です。早い話、儲かるか否かです。
こうしたお題が提示されたとき、よくやってしまう失敗は、「地域への貢献」や「日本への貢献」を軸にしてしまうことです。それ自体は立派なことですが、利益が生まれなければ会社はやっていけません。つまり、単に地域に貢献するだけでは不十分です。コンサルティングは慈善事業ではありません、あくまでもビジネスです。
今回のテーマですと、「その道府県では、なぜコンサルティングの需要が高まるのか?」この視点が大切です。 以上を踏まえた上で、回答例を以下に記します(ちなみに、これは実際に通過したときの回答です)
新潟です。理由は「周辺地域の活性化が予想されるから」です。
現在、東北・北海道は食料や資源の供給拠点になっています。加えて豊富な自然によるエネルギー開発、学術研究機関の進出、交通網整備等も付随して進んでいます。そこから消費者の集中やインフラ整備の促進が想定されます。故に企業進出が他地域より増え、物流や商業・サービスの需要も拡大するでしょう。
反面、必要な道路やインフラ整備が進んでいない現状があります。故に企業ごとに調達や経営の効率化が求められます。そのため、東北周辺におけるコンサルティングの価値は高まると思われます。その中で、空港や鉄道等の交通アクセスの利便性が高い新潟を選びました。
いささかつっこみ所の多い回答ではありますが、この程度書けていれば、総合系・IT系では問題ないでしょう。総合系・IT系で重視されるのは、物事の仕組みや構造を把握・理解できているか、です。「なぜ新潟なのか?」→「●●だからです」→「なぜそう言えるのか?」→「●●だからです」。この論理構造が妥当であること、納得感があることが第一です。対して戦略系では、そこに具体的な数値やデータ、経済の時流に基づいた話も欲しいところです。

以上、外資コンサルのES対策の基本でした。この記事が少しでもお役に立てば幸いです。