
この記事は私が実際に商社に勤務されている方にヒアリングをおこなって作成しています。大手商社や4大商社を志望する就活生の方の参考になれば幸いです。
仕事編や雰囲気編でもたびたび取り上げていますが、商社の要は「ヒト」です。
そのため商社は人材の育成に力を入れており、語学研修や企業内研修、管理職研修などと社員がブラッシュアップできる環境を整えています。
仕事編で、BRICSの台頭により第二言語が理解できる人材が求められていると説明しました。実際に、第二言語の習得を後押しするシステムがあり、それが語学研修です。
第二言語の習得を希望する若手社員を1年間の期限付きで海外へ派遣し、現地で研鑽する事で経験を積む事ができるシステムです。応募した社員の中から選抜され、選抜された社員は自分で研修国、語学学校を選んで会社に申請します。(現地の語学学校にもレベルの差異がありますので、会社側でリストは持っています。)派遣される半年前から、日本で語学学校である程度の基礎力を身につけてから、実地研修に向かいます。研修中は人事へのレポートが必須なのはもちろん、現地に支店がある場合は、現地の支店長や駐在員のサポートが受けられる場合もあり、人脈を築けるチャンスでもあります。研修が終了し日本に帰国後は、人事が本人の希望を確認して研修前の所属先に戻る場合もあれば、新しい所属先になる場合もあります。本人のやる気と経験を生かすように配慮されています。
また、社員が応募する時、直属の上司を通さずに人事へ直接応募できるようになっています。
選抜結果で合格時のみ人事から直属の上司へ連絡がある仕組みになっており、社員の希望が断たれないようになっています。上司と信頼関係が築けている場合は、上司が推薦してくれる場合もあります。
現地での語学研修は現地情報も知る事ができるチャンスでもあります。
商社の社員ともなると、30代になると赴任命令によって海外に駐在する機会が多くなります。本社と現地とのやり取りとの間にたち、また、プロジェクトを指揮する立場にもなるので、ある程度の知識を経験が必要になります。そのため、20代の若手社員にたとえ失敗してでも仕事を任せてどんどん経験を積ませていく、という文化が商社にはあります。
「井の中の蛙大海を知らず」という諺があり、商社の社長はこの言葉をよく使います。商社ともなれば、世界規模で取引を行いますので、まさにこの言葉がぴったりだと思います。だからこそ、語学研修等でやる気のある若手社員をどんどん海外に送り出しているのです。
余談になりますが、「商社」という業務形態は日本独自のスタイルであり、海外では適切な産業区分や英語訳がありません。そのため海外からすると商社の実態がよく理解できないと言われます。単なるTrading company(貿易会社)というカテゴリではなく、実際にはもっと複雑なのにも関わらずです。ある面白い文章を見つけましたのでご紹介します。
「商社マンの『お仕事』と『正体』がよく分かる本」の著者である秋山謙一郎氏によると、
「世界で日本にしかない希有なビジネスモデル、総合商社を正確に表現するのであれば、
『貿易会社 兼 電力会社 兼 石油会社 兼 資源会社 兼 鉄鋼会社 兼 穀物商社 兼 鉄道会社 兼 航空宇宙会社 兼 機械商社 兼 アパレル会社』
という長ったらしい産業区分を作らない限り、世界から理解されることはないでしょう。」
と書かれています。本当に的を得ている指摘だと思います。
私も外国人の友人たちに商社について説明する時がありました。一応Trading companyであり多方面と取引している、とは説明をしていましたが果たして彼らは納得していてくれたのかどうか確信がありませんでした。 かつては、海外駐在になった商社マンたちが海外で新規開拓する時、会社の業務形態について都度説明しなくてはならなかったのかもしれません。今では培ってきた人脈とノウハウがあり社名も認知度がありますのである程度は通じるかもしれませんが…。極端な例ですが、海外のコンサルタント会社といったら○○と名前がパッと出てくるくらいにならないといけないのかもしれません。