
この記事は私が実際に保険会社に勤務されている方にヒアリングをおこなって作成しています。金融業界や保険会社を志望する就活生の方の参考になれば幸いです。
損害保険会社は世界に数百もあるといわれています。日本にもアメリカ系、欧州系と様々な損保会社が進出しています。その多くは自動車保険や生命保険とのセットですが、中にはペット保険や海外旅行保険など、特殊なものもあります。
損害保険会社の表の顔といえば「自動車保険のテレビコマーシャル」でしょうか。対応がいい、保険料が安い、交渉力がいい…いろいろとPRを並べ立てて他の会社との違いを訴求していますが、実際はどうなのでしょうか。
車を運転する方はご存知でしょうが、自動車を購入すると自賠責という強制保険に加入します。これはどこが運営しているのか、というと「自動車保険を扱っている損保会社がみんなでお金を出し合ってつくった組織」なのです。ですから、国が関与しているわけではありません。ですが、この自賠責では万が一の事故の補償が足りないおそれがありますので、大体の人が「任意保険」に加入している、と思われています。
思われている…実はここが興味深いところです。もし、いまあなたの目の前の道路を10台の車が通過したとします。任意保険に加入しているのはそのうち何台でしょうか?答えは6台です。つまり、残りの4台は自賠責だけの「無保険状態」なのです。そういう相手に車をぶつけられたらどうなるでしょう?彼らは事故の返済能力があるのでしょうか?実際の事故、それも任意保険未加入の人たちは、賠償金を払う能力がない場合がほとんどです。そうした場合、自分の自動車保険は賠償してくれるのでしょうか?
自動車保険は相手への補償を考慮して作られています。ですから、自分の損害は相手から補償してもらうことになるのです。こうしてみますと、自動車保険ほど身近で、怖いものはないのです。そして、保険会社からしてみれば、事故の被害者が「常識のある人ではない」場合も当然ありえます。そういうケースでは「タフな人材」が起用されます。新卒の若い人たちには絶対に任せられないセクション、そこには自衛隊や警察OBが登用されているのです。
損害保険会社は実に様々な商品を開発しています。貿易保険、海賊保険、流通保険などは世界を相手にしています。飛行機、船舶、トラック輸送、鉄道といったロジスティックといわれる分野の保険は世界中で需要が高まっています。最近ではイギリスのロイズという大手再保険会社(船舶で有名)が大赤字をだしてしまいました。再保険とは保険会社が「保険に加入する」会社のことです。船舶事故は滅多に起こらないといわれて来ましたが、最近はソマリア海など、海賊が横行しています。インドネシア、シンガポールおよびマラッカ海峡といった東南アジアの重要な経由地を交易する船舶は、不意に漁船のような船舶からの海賊に乗っ取られ、積み荷を奪われることは日常茶飯事となりました。そこで、民間の狙撃兵まで動員させて警護させているほどです。ですから、万が一の積み荷補償対策としての保険が重要なのです。
そうなると、保険は最早国内商品だけではありえません。公海上なのか、領海上なのか国際法規も知らなければなりませんし、単に外国語ができるだけでは意味がないのです。やはりタフな交渉力が必要になります。タフとは体が、精神が頑丈ということではありません。負けないという気持ちが強いことをいいます。それこそが、この世界に最も有効な武器なのです。