
この記事は私が実際に銀行に勤務されている方にヒアリングをおこなって作成しています。銀行を志望する就活生の方の参考になれば幸いです。
研修、そして研修
銀行に入行後「入行式も終わったし、さぁお札を数えるぞ!」そう意気込んでいる新入社員を待っているのは「研修」です。配属が決まってから研修を受ける銀行、新入社員をまとめて教育する銀行、色々ありますが、どこの銀行もまず「研修」でひたすら「覚える」ことを課してきます。
研修では、まず「守秘義務」を徹底的に教えられます。銀行内の書類は絶対に外に持ち出さないこと、銀行内の顧客情報や取引情報を絶対に外で喋らないこと、これらを徹底的に教えられます。
その後はビジネスマナーもそこそこに、実務に必要な用語の説明や、端末の操作方法に移ります。
実務に関する研修で、まず習うことは「用語」。
銀行の仕事は難しい用語がたくさん出てきます。普段銀行を利用していて、耳にしたことのある言葉といえば「口座」「通帳」「印鑑」「本人確認書類」「伝票」その程度ですよね。
しかし実際の現場で「口座」と言えば「普通預金」「当座」「決済口座」「貸付口座」と数種類の口座が存在します。それぞれの特徴や、使う場面も違います。聞き慣れない言葉に戸惑っていては何も覚えられません。とにかく耳から入ってきたものを自分なりにノートに書きましょう。研修が終わってから、ノートを読んで整理する、研修はその繰り返しです。
融資の現場に就くのであれば、貸金の種類とその特徴を覚えなければいけません。証書貸付、手形貸付、商業手形の割引、特殊当座貸越、シンジケーションローン、小規模企業共済、不動産担保や預金担保、リスケにおはじめ、稟議や審査、保証協会や債権売却、ずらっと並んだ単語を聞いて、現時点ですべてを理解している方は少ないかと思います。
さらに現場ではこれらの単語を略して話します。たとえば証書貸付を「証貸(しょうがし)」、特殊当座貸越を「特当(とくとう)」と言ったように、略すのです。
現場で略語を使われて、とっさに正式名称が浮かぶくらいには、用語を覚えておきましょう。「なんですかそれ?」という顔をしてしまうと「何習ってきたんだよ」と呆れられてしまいます。
研修ではこれらの単語や事務内容、処理方法をどんどん詰め込まれます。窓口担当が決まっている場合はお札を数える「札勘」もこの研修時に教え込まれます。
聞いたことのない単語や、実際やってみると難しい札勘、少しの操作ミスで動かなくなる端末の悲劇など、この研修の間にみっちりと実感し、実務になったらどうなるのだろうと不安を覚えるのが研修の醍醐味です。この段階でゆるい大学生脳は捨て去り社会人の脳に切り替わると言っても過言ではありません。言わば研修は「洗礼」です。
研修にも楽しいことはある
もちろん研修は恐ろしいことばかりではありません。
不安を共有できる仲間もできます。同期です。
押し寄せる銀行用語にげっそりしながら、たどり着いたお昼休み。昼食を摂りながら、同期と「あの言葉の意味はどういうことか」や「端末操作が難しすぎる」「札勘できないよ」など嘆きあうことで連帯感が生まれることでしょう。そこで高め合える同期と出合えれば、これからの銀行生活も楽しくなるでしょう。
ここで知り合った同期とは今後ずっと付き合う可能性が大きいです。
テレビドラマ「半沢直樹」においても、主人公の半沢と、近藤や渡真利といった「同期組」が仲良くしているシーンが多々あります。これは実際の銀行でもよくある光景です。
厳しい研修を耐えて、現場に行き、揉まれて、上司や先輩には言えない愚痴を吐きあう相手が「同期」なのです。
酸いも甘いも共にした仲間なので、上司や部下とは違った連帯感が生まれます。また、同年代で話しが通じるのも同期のいいところです。
転勤などで離れてしまった場合も、意外と同期との交流は続きます。
メールなど私的な連絡はもちろんですが、銀行には銀行内部でやりとりできる専用のメールソフトがあります。それらで業務の空いた時間に近況を報告したり、異動などの情報を伝え合う、ということは実際にしていました。
現場では絶対に言えない上司の悪口なども、同期となら密告を気にすることなく言い合えるので、同期はとても大事な存在です。
この同期と出合えるのが研修です。友達を作るのが得意でないひとも、研修という「苦行」を味わっている仲間なので、自然と打ち解けることができます。 大学を卒業したらもう一生ものの親友なんてできない、そう思っている人、意外にここで「一生ものの親友」得られるかも知れませんよ。