
この記事は元理系大学院生の学生さんに寄稿していただきました。これからインターンシップを控えている方の参考になれば幸いです。
今回は、ここ数年で活発になってきた「インターン」について、学生目線でお伝えしたいと思います。ちなみに、私は国立大学の現役理系大学院生で、これまで3社のインターンに参加した経験があります。
インターンって何?
『インターンシップとは、学生が一定期間企業などの中で研修生として働き、自分の将来に関連のある就業体験を行える制度。』(Wikipediaより引用)
ということで、実際に企業の中に入って就業体験ができる制度のことを指します。インターンシップ≒インターンだったり、参加した学生は「インターン生」「インターン」などと呼ばれたり、制度のことを指す場合と身分の事を指す場合が混在しています。
なんでインターンシップをするの?
近年、「雰囲気が合わない」「想像していた仕事と違っていた」というような観点から、わずか数年で退職する新入社員の数が増大しているという問題があります。企業側としては、研修を終えたばかりの社員が退職することは大きなマイナスとなります。研修は新入社員のトレーニング期間なので、その間新入社員は会社の利益を生み出しませんし、先輩社員は仕事をするはずの時間をトレーニングに割いているため、普段よりも利益を出せません。そういった意味で、研修だけで退職されてしまうと「食い逃げ」レベルの損なのです。
企業側はこのようなコストを避けるため、本当に入社したいかどうかを学生に確認してもらいたいという思いから、インターンシップを開催しています。マッチングを図るという表現がこれに当たります。全体の傾向として、インターンに参加した学生は実際の選考で優遇されます。(「優遇しません」と明言して本当に優遇しない企業もよくありますが、明言しつつも優遇する企業もあります)
学生側としても、四季報などの活字や会社説明会では得られない情報が得られる点で大きなメリットがあります。若手社員とコミュニケーションできる機会が設けられる場合も多いです。興味がある企業のインターンに参加することは、今後の人生や就職先を考える上で非常に有意義な体験となるでしょう。
実際にはどんなことをするの?
業界・期間により、かなり異なってきます。まず期間ですが、短期だと1日から2,3日くらい、中期だと1,2週間程度、長期だと1,2ヶ月に渡るものもあります。
短期間のインターンシップでは、会社の中を案内されて実際に社員が働く職場や施設などを見学したり、グループワークをしたり、社員との懇親会があったりします。
中期間のインターンシップでは、実際の業務を模した課題や実際の業務の中でも簡単な作業を与えられ、グループや個人で取り組むことが多いです。また、上記の短期インターンでの内容がいくつか組み合わされることもあります。
長期間のインターンシップでは、実際に社員と同じような環境を割り当てられ、実際の業務に近い業務もしくは実際の業務を行います。
上記に挙げたものは大学三年生(修士1年生)の夏頃に開催されるタイプですが、最近では大学1年生から参加できる、数ヶ月~の長期インターンも増えています、週に3日程度、定期的に業務に携わります。
参加することのメリットは?
「社員に近い目線で仕事や職場を経験できる」ことが第一のメリットでしょう。入社前に実際に企業の中に入れる機会はそうそうありません。また、社員と話すことで、普段どんな業務をしているのか、残業はどうなのか、職場の雰囲気は、飲み会は、などと言った情報が得られる場合もあります。(企業によっては、そういったことを話しやすくなるように、リラックスした雰囲気を作ってくれる場合もあります。そうでない場合もあります。)
また、会議に参加したり、他社に電話をかけてみたり、社員と共同作業したりなど、バイトではできないような業務ができる場合があります。
こういった体験を学生の間にすることで、「やりたいと思っていたこと」の実像がより明確になり、その後の生活に生かせます。「思ってたのと違ったので違うことをしよう」「やりたいと思っていた方向からちょっと軌道修正」など、自分の将来を考える上での貴重な手がかりとなることでしょう。
一方で、学生の社会勉強のためという趣旨なので、無給の場合が多いです。給料が発生したとしても、アルバイトと同等にもらえることはあまりありません。
ちょっとウラ話
すでに少し述べましたが、企業にとって「お金を稼いでくれない人のためにすること」は基本的にコストなので、インターンシップを開催することは当然コストです。ではなぜコストを払ってまでインターンシップを開催するのか?
- 早期の採用活動のため
採用活動において企業の倫理憲章というものがあり、ざっくり言えば「採用活動をする時期をみんな一緒にして、内定出せる日は○日以降にしましょう」というルールが存在します。しかし、こんなルールを守ってたら、ルールを守らない企業(外資などに多い)に先に優秀な学生を取られてしまいます。ルールを守りつつ優秀な学生を早期に確保するには?インターンで早めに…とか。
- 知名度アップのため
一般に学生はBtoC(一般の顧客を対象とした事業を展開する企業、食品や家電などが該当)に集まる傾向があります。すると、知名度の点で、BtoB(企業を対象とした事業を行う企業、システム開発や営業代行などが該当)は不利です。そこでインターンシップを開催することで、学生への知名度も上がりますし、そもそも社名が外部に露出する機会が増えるという宣伝効果もあります。
- 労働力として使うため
インターンシップは学生の社会勉強という名目が強いので、無給の場合が多いです。無給で若い人間が使えるなんて、人手不足の企業には最高ですね。ということで、インターンという名目でアルバイトレベルの仕事(掃除など)をさせられる事例があるようです。他にも、インターンとは名ばかりの適当な作業をさせられる場合もあります。こういったインターンに参加しないように気をつけましょう。
最後に
いろんな思惑がひしめくインターンシップ制度ですが、将来をちゃんと考えるうえでの重要な手がかりとできるように『利用』するつもりで参加するといいんじゃないでしょうか。失敗も含めて社会勉強と思って、余裕があればとりあえず参加してみるというスタンスも良いと思います。