
この記事は私が実際に海外で勤務されている方にヒアリングをおこなって作成しています。海外で働きたい就活生や転職者の方の参考になれば幸いです。
日本でも海外でも就活の際大切なことのひとつに、自分の能力を客観的に分析してアピールできる力が挙げられると思います。当たりまえのことのようですが、フランスでの就活を通じて、あらためて自己アピールについて考えさせられています。
私は日本で総合職の経験があるのですが、勤務していた企業の方針で、入社後まずは「ジェネラリスト」になるための教育を受けました。新入社員をまず営業に配属した後、ほかのさまざまな部署に異動させ、一通りのことができるようになった後、適性を見てより専門性のある部署に配属する企業は、日本では少なくないと思います。
一方で、フランスでは職種別採用が一般的です。それは職種ごとに適性と専門性を持った人材を採用できるという意味において、企業と候補者にとって理想的な採用方法だと思います。その一方で、自分の専門分野のことしか知らない・できない人材がとても多い、ということをフランスの企業や行政機関に問い合わせをするたびに私は痛感していますが、それが普通なのです。そもそも新卒採用という概念が存在しないフランス(だけではないと思いますが)では、多くの場合、めざす職業に就くために必要となる専門技術・知識、資格やディプロムを専門学校、あるいはマスター(大学院)を修了して取得することが必須です。
求人情報には必ずといっていいほどその職業に関連するディプロムや資格、あるいは何年以上かの経験を有することが絶対条件として記載されています。つまり新卒であっても採用されるには、即戦力として活躍できる能力があるとみなされなければならないのです。そのような条件で運よく採用され何年も異動もなく仕事をすれば、スペシャリストにはなれるかわりに、隣の部署でしていることについてまったく何も知らないという風になるのも、当然といえば当然です。
それだけ採用時候補者の専門性が重視されるフランスにおいて、特に専門技術・知識がない、あってもフランスではいかすことができない、という人はどうしたらいいのかという話になってくるかと思います。そこでもう一度、自分がそれまでやってきたこと、またできることを客観的に見直す必要が生まれてくるのです。
私は履歴書の作成や企業での面接を通じて、それまで自分ではあまり自己アピールにならないと思っていたことが、意外にも評価されるということに気がつきました。たとえば業種を問わず一般企業で営業(販売職)に配属された後、商品・サービスの企画・開発あるいはマーケティングを担当する部署に勤務した経験のある人なら、たとえ部署ごとの経験年数が短くてもそれぞれの部署でしてきたことがすべて職務経験として評価されます。
そんなこと当たりまえと思われるかもしれませんが、基本的にスペシャリストばかりのフランスにおいて、異なる職種の経験をあわせ持つ人材は評価されるのです。
もちろん何かひとつ専門分野があれば強みになることは間違いありませんが、日本の企業で広く浅く複数の職種に関わった経験が、「polyvalent」(=複数の機能・資格をもつ)な人材として評価の対象となることもあるということです。 職種別採用が一般的な国で就活をする際に、これといって専門分野がないと焦る前に、もう一度自分ができることを客観的に見つめなおしてみるとよいと思います。見方を変えれば自分のアピールポイントになることが見つかるかもしれません。